演目と配役
司馬芝叟 作
石川耕士 監修
一、箱根霊験誓仇討(はこねれいげんちかいのあだうち)
箱根山中施行の場
同 白滝の場
◇夫の仇討を見事成就させた妻の思い
兄の仇である北条方の滝口上野(たきぐちこうずけ)の手がかりを求める飯沼勝五郎は、病の身ながら妻の初花とともに箱根山中の阿弥陀寺へとやってきます。そこに、北条家と上野の様子を探るために非人に身をやつした家来の筆助が現れ、勝五郎に北条家の動向を伝えます。そこへ初花の母早蕨を人質に取った上野が姿を現し、夫と母の命を握られ逆らうことができない初花を、勝ち誇るように連れ去っていきます。ところが、弔いの念仏を唱える夫と母の前に初花が突然戻り…。
新開場後の歌舞伎座では初めての上演となる仇討ち狂言をご堪能いただきます。
飯沼勝五郎 |
勘九郎 |
滝口上野/奴筆助 |
愛之助 |
女房初花 |
七之助 |
刎川久馬 |
吉之丞 |
母早蕨 |
秀太郎 |
◇福をもたらす神々による祝いの舞踊
恵比寿、弁財天、寿老人、福禄寿、布袋、毘沙門、大黒天の七福神が、乗合船で現れます。七福神はそれぞれ祝いの舞を踊り、新春をめでたく寿ぐのでした。
七福神がそろって踊るのは昭和33(1958)年以来60年ぶりです。初春の襲名を祝う舞踊をお楽しみいただきます。
恵比寿 |
又五郎 |
弁財天 |
扇 雀 |
寿老人 |
彌十郎 |
福禄寿 |
門之助 |
布 袋 |
高麗蔵 |
毘沙門 |
芝 翫 |
大黒天 |
鴈治郎 |
三、菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)
車 引
寺子屋
〈車引〉荒事で見せる三兄弟の争い
菅丞相の舎人(とねり)梅王丸と斎世(ときよ)親王の舎人桜丸は、互いの主人を陥れた藤原時平への恨みを晴らそうと、時平の乗る牛車に立ちはだかります。これを止めに現れたのは、時平の舎人松王丸。実は三人は三つ子の兄弟で、松王丸は梅王丸と桜丸の狼藉をたしなめます。やがて姿を現した時平の威勢に竦み上がる梅王丸と桜丸。遺恨を残した三兄弟は、決着をつけることを誓い、その場を後にするのでした。
初代白鸚、そして新白鸚が得意とした松王丸を、その芸を受け継ぐ新幸四郎が勤める、襲名にふさわしい華やかな一幕にご期待ください。
〈寺子屋〉忠義のはざまで苦悩する夫婦の姿
寺子屋を営む武部源蔵は、菅丞相の嫡子菅秀才をかくまっていますが、敵方の藤原時平の家臣春藤玄蕃の知るところとなり、菅秀才の首を討つよう命じられます。源蔵夫婦は悩んだ末、今日寺入りしたばかりの子どもの首を身替りとして、首実検にやってきた松王丸に差し出します。実はその子は松王丸の子供の小太郎。松王丸は菅丞相に敵対する時平に仕えてはいるものの、今こそ恩義のある菅丞相に報いようと、女房の千代と申し合せ、あらかじめ身替りになるように我が子を差し向けていたのでした。新白鸚が幸四郎襲名披露の際に演じた松王丸を、37年の時を経て白鸚襲名披露でも勤める、重厚な義太夫狂言の名作をご覧いただきます。
<車 引> |
|
松王丸 |
染五郎改め 幸四郎 |
梅王丸 |
勘九郎 |
桜 丸 |
七之助 |
藤原時平 |
彌十郎 |
<寺子屋> |
|
松王丸 |
幸四郎改め 白 鸚 |
武部源蔵 |
梅 玉 |
千 代 |
魁 春 |
戸 浪 |
雀右衛門 |
涎くり与太郎 |
猿之助 |
百姓 良作 |
由次郎 |
同 田右衛門 |
桂三 |
同 鍬助 |
寿猿 |
同 米八 |
橘三郎 |
同 麦六 |
松之助 |
同 仙兵衛 |
寿治郎 |
同 八百吉 |
吉之丞 |
百姓 吾作 |
東蔵 |
春藤玄蕃 |
左團次 |
園生の前 |
藤十郎 |
一、双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)
角力場
◇対照的な力士の意気地
大坂堀江の角力小屋の前。人気関取の濡髪長五郎と、素人角力で名を上げた放駒長吉の大一番に多くの見物客が集まります。結果は、なんと放駒が勝利する番狂わせ。しかし、これは濡髪がわざと負けたため。これに対し、真剣勝負ではなかったことを知った放駒は激怒。濡髪は、理由を話しても耳を貸さない放駒に次第に怒りを露わにし、手にした茶碗を握り潰して力のほどを見せつけます。遺恨を残した二人は、後日の勝負を約束し別れるのでした。大坂の風情があふれる世話物の名作をご覧いただきます。
濡髪長五郎 |
芝 翫 |
藤屋吾妻 |
七之助 |
仲居おたけ |
宗之助 |
茶亭金平 |
錦 吾 |
山崎屋与五郎/放駒長吉 |
愛之助 |
二、襲名披露 口上(こうじょう)
二代目松本白 鸚
十代目松本幸四郎
八代目市川染五郎
◇歴史的な三代襲名を祝う一幕
裃姿の俳優がそろい舞台に並んでお祝いを述べ、二代目白鸚、十代目幸四郎、 八代目染五郎が、皆様に襲名披露のご挨拶を申し上げる一幕です。
◇主君を思う弁慶が見せた決死の覚悟
兄頼朝との不和により、都を落ち行く源義経とその一行。義経は強力に、家臣武蔵坊弁慶らは山伏に姿を変えて奥州平泉を目指します。一行は、道中の加賀国安宅の関で関守の富樫左衛門の詮議を受けます。弁慶は自分たちを、東大寺建立のための勧進の山伏であると名のります。富樫が弁慶に勧進帳を読むよう迫ると、機転を利かせた弁慶は、白紙の巻物を勧進帳と偽り見事に読み上げます。しかし、番卒の訴えで強力の正体が義経と疑われると、弁慶は義経を散々に打擲(ちょうちゃく)し、この場で打ち殺そうと言い張ります。富樫は義経主従だと見破りながらも、主君を命懸けで守ろうとする弁慶に心を打たれ、一行の関所の通行を許可するのでした。
新幸四郎が高麗屋ゆかりの武蔵坊弁慶を勤め、新染五郎が源義経を初めて演じる、歌舞伎屈指の名作をお楽しみいただきます。
武蔵坊弁慶 |
染五郎改め 幸四郎 |
源義経 |
金太郎改め 染五郎 |
亀井六郎 |
鴈治郎 |
片岡八郎 |
芝 翫 |
駿河次郎 |
愛之助 |
常陸坊海尊 |
歌 六 |
富樫左衛門 |
吉右衛門 |
四、上 相生獅子(あいおいじし)
下 三人形(みつにんぎょう)
〈相生獅子〉石橋物では最も古い華やかな舞踊
手獅子を持った二人の姫が、花や蝶に戯れる獅子の様子を、移りゆく四季折々の風景の中で踊ります。艶やかさを表現する女方の獅子物をご堪能いただきます。
〈三人形〉傾城、奴、若衆の賑やかな踊り
夜桜が行燈に映える吉原仲之町。今評判の傾城と、通い詰める馴染みの若衆、そしてその供の奴がやってきます。三人は軽妙に踊りに興じ、廓の夜は更けていくのでした。新吉原を舞台とした古風な振りの舞踊をご覧いただきます。
<相生獅子> |
|
姫 |
扇 雀 |
姫 |
孝太郎 |
<三人形> |
|
傾 城 |
雀右衛門 |
若 衆 |
鴈治郎 |
奴 |
又五郎 |